りぼんの読書ノート

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銀二貫(高田郁)

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八朔の雪と同様、大阪の「食文化」をテーマにした商人物語です。仇討ちで父を亡くしたところを、大阪天満の寒天問屋のあるじ和助に銀2貫で救われ、丁稚として引き取られた10歳の少年・鶴之助は、名前を松吉とあらためさせられ、商人としての厳しい躾と生活に耐えていきます。

苦労しながらも、主人・和助はもちろん、番頭・善次郎や、同僚の丁稚・梅吉、得意先となった料理人・嘉平とその娘・真帆など、商人としての誇りと矜持を持ち、人情にも厚い人々に支えられて成長していく松吉でしたが、度重なる大阪の大火が彼らの運命を左右していくのでした・・。

「銀2貫」というと、近松の「曽根崎心中」で登場人物の運命を狂わせたほどの額。もちろん大金です。もともとこのお金は、信心深い和助が先の大火で焼けた天満宮の再建のためにようやく工面したものだったのですが、この「買い物」、高かったのか、安かったのか。

ヒロイン真帆を襲った悲劇と、度重なる松吉とのすれ違いや、小悪人の登場と正直者の勝利というドラマ性は、かなりベタですけど、時代劇はこのベタさがいいんです。それに加えて、寒天を改良して「水羊羹の発明」に至るという、真に迫ったエピソードもありますからね。

『八朔の雪』がTVの連続時代劇なら、こちらは舞台向きというところでしょうか。ツボを抑えたキャラ設定と話の展開がとっても上手です。

2009/9