りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

プラハ 都市の肖像(ジョン・バンヴィル)

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再来週にプラハへの出張がありそうです。行き先はプラハではなくて別のところなのですが、経由地のプラハで1泊できる日程になりそうなんですね。残念ながら上司と一緒なのですが・・。^^;

ということで、プラハに関する本を探して読んでみました。ところが、ケプラーの憂鬱を書いたバンヴィルさんの本書は、観光ガイドとしては全然役に立たないどころか、歴史を俯瞰できるような内容でもありません。

「では何か?」と問われると、それがまた難しい。著者が見出したプラハの魅力、というより過去を遠望した中からピックアップされた「プラハの断片」とでもいう感じでしょうか。本書で多く取り上げられているのは、やはり自書で触れていたティコ・ブラーエとヨハネス・ケプラー。2人の天文学者の微妙な関係と、彼らを支援した16世紀の皇帝ルドルフ二世にまつわるエピソード。もちろん、この時代の直後には「ドイツ30年戦争」が待ち受けています。

カフカミラン・クンデラにも触れていますが、本書の主役ではありません。ヨーロッパの西端であるアイルランド出身の作家が、東端の国でなにを感じたのかは興味深いし、読み物としては面白いのですが、全体像を知らずに断片だけを見ても、完成品の美しさは理解できませんね。やはり出張前にはちゃんとした歴史解説書を読むべきです。

2009/7/9


【追記】プラハというと、「街中にある天使象はカトリックの占領軍なのだ」との表現で、破綻したヤン・フス宗教改革を語りながら、ソ連の戦車に踏み躙られた「プラハの春」を連想させてくれた、ミラン・クンデラの『笑いと忘却の書』を一番に思い起こすのですが、これまた断片的なイメージです。