ということで、プラハに関する本を探して読んでみました。ところが、『ケプラーの憂鬱』を書いたバンヴィルさんの本書は、観光ガイドとしては全然役に立たないどころか、歴史を俯瞰できるような内容でもありません。
「では何か?」と問われると、それがまた難しい。著者が見出したプラハの魅力、というより過去を遠望した中からピックアップされた「プラハの断片」とでもいう感じでしょうか。本書で多く取り上げられているのは、やはり自書で触れていたティコ・ブラーエとヨハネス・ケプラー。2人の天文学者の微妙な関係と、彼らを支援した16世紀の皇帝ルドルフ二世にまつわるエピソード。もちろん、この時代の直後には「ドイツ30年戦争」が待ち受けています。
カフカやミラン・クンデラにも触れていますが、本書の主役ではありません。ヨーロッパの西端であるアイルランド出身の作家が、東端の国でなにを感じたのかは興味深いし、読み物としては面白いのですが、全体像を知らずに断片だけを見ても、完成品の美しさは理解できませんね。やはり出張前にはちゃんとした歴史解説書を読むべきです。
2009/7/9