りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

偽りの書(ブラッド・メルツァー)

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聖書に記録された人類最初の殺人は、兄カインによる弟アベルの殺害なのですが、その記録には決定的な謎があるとのこと。凶器については何も記されていないそうです。

一方、1932年にミッチェル・シーゲルという男がクリーブランドで殺害されており、死の真相も不明で、犯人も捕まらないままに終わっています。しかし父親としての彼の死は、後に全米的に有名な「事実」となるのです。彼の息子ジェリー・シーゲルが、銃で撃たれた父親の死を悼んで作り上げたのが、「銃弾を跳ね返す男」スーパーマンの物語。

幼い頃に父親の過失で母を失い、父親もその罪で獄に服したために、事実上孤児として育ったカル。ホームレス支援団体の活動をしていたカルは、ある晩、刑期を終えた後もずっと行方不明となっていた父親が倒れている場面に出くわします。父親がある人物の依頼で受け取りにいった「貨物」が、カインとスーパーマンの物語を結びつけるものだったとは!

ダ・ヴィンチ・コード以来、こんな作品がめちゃくちゃ増えました。現代から手が届くほどの過去に、超古代の謎を発見した人々がいて、それがまた隠されたために、現代でふたたび「謎解き」と「追跡」が起こる物語。本書もそんなひとつです。

この種の物語は、途中のジェットコースター的な展開や、現代での謎解きの過程よりも、「オリジナルの謎」がどれだけ魅力的なものかにかかっていますね。そういう意味では、本書は成功しているのでしょう。カインがアダムを殺害した凶器の意外さと、シーゲル父子から主人公たちへとつながる古代からのメッセージが、爽やかなのです。展開はドタバタですけどね。

2009/4