りぼんの読書ノート

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ビリー・ザ・キッド全仕事(マイケル・オンダーチェ)

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21歳で死ぬまでに21人殺したと云われる伝説のアウトロービリー・ザ・キッドの短い生涯を、詩、挿話、写真、証言、インタビューなどで再構成した作品なのですが、この本を読んでもビリーの伝記的な生涯はわかりません。ここに現れてくるのは、銃撃戦、略奪と逃走、友人や宿敵への思い、激しい愛といった、ロマンスとヴァイオレンスに彩られた断片にすぎないのですから。

ビリーの毀れた人生さながらに、「死」を想起させる毀れた感覚の詩は、ビリー本人が綴ったものとされているようですが、原題「collected works」を「全作品」ではなく「全仕事」と訳しているのは、彼の人生そのものを「一種の芸術」と捉えているからでしょうか。こなごなにされた断片の数々から浮かび上がってくるものは、やはり混沌なのですが・・。

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本書を読む前の手助けとして、ビリー・ザ・キッドの生涯を伝記的に記述しておきましょう。伝説が一人歩きしていて、どこまでが「事実」かはわからなくなっているようですけど。

1859年 ニューヨークで生まれ、義父に率いられた一家はゴールドラッシュで西部に移住。伝説では、15歳の時に母を侮辱した男を殺して逃亡しカウボーイになるものの、酒場の喧嘩で相手を射殺してまたも逃亡。馬泥棒や駅馬車強盗を働く悪業仲間に加わったようです。

1877年(17歳) 堅気の生活を始める決心をしてタンストール牧場で働きはじめたが、ニューメキシコ州のリンカン群で起きた2つの大勢力の暴力的抗争に牧場ごと巻き込まれ、恩人のタンストール氏が射殺されたため、ビリーも抗争の真っ只中に放り込まれてしまう。

1878年(18歳) 銃撃戦や抗争が続いた後、最後は政治家を買収した相手方によって、ビリーら17人が立てこもった農場を軍隊に攻撃され、多数の死者を出して抗争は終結。この時ビリーは夜中に脱出しています。

1879年(19歳) 新知事ウォレスによって特赦を得られそうになり自首したものの別件で告発されたため、拘置所から脱走。家畜強盗団を結成しリーダー格となる。

1881年(21歳) ビリーの友人であったパット・ギャレットが保安官に選出され、追跡隊を率いてビリー一味を追い詰める。一旦は逮捕され絞首刑を宣告されたビリーは、看守を射殺して脱走。最後は潜伏していたフォート・サムナーでビリーを待ち伏せしていたパットに射殺されて生涯を終える。

でも、どうしてビリーが「西部のヒーロー」として伝説化されるに至ったのでしょう。西部開拓が終焉しようとする時代に「最後のアウトロー」として生きた「少年」が、人々にある種の夢を見せてくれたのでしょうか。魅力的な人物だったとも言われています。

2009/4