りぼんの読書ノート

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ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル3(スザンナ・クラーク)

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いよいよ第三部では、物語がクライマックスに入っていきます。イギリスでただ2人の魔術師であるジョナサンとノレル氏の関係が決裂したのをあざ笑うかのように、異界の存在はますます人間界に忍び寄ってくる。気に入った人間を妖精界に連れ去るだけでなく、イギリス国王の生命を狙ったり、さらにはイギリス全土に不思議な現象が起こり始めるのです。

妖精を召還する術を探し出すためにヴェネチアに旅立ったジョナサンでしたが、逆に現れた妖精に呪いをかけられて、彼の周囲は永遠の闇に閉ざされてしまう。やはり2人が協力しなければ、異界の存在とは対決できないようなのですが・・。

ラストは魔術の物語にふさわしく不思議な巡りあわせで予言が実現するのですが、それは2人の魔術師にとってどういう意味があったのか。そして「大烏の王」は再来したのか。なかなか奥深い物語でした。

しかしこの本が『ハリー・ポッター』に匹敵する人気を得られるかというと、それはなさそうです。良かれ悪しかれ『ハリポタ』は、魔法を現代に持ち込んで少年たちの成長物語として華やかに描いてくれたのですが、本書にはそのような躍動感がないのです。舞台が19世紀はじめということもあるけど、あくまで「よくできた昔話」のような「古典」にしか思えません。

映画化もされるようですが、このままのストーリーではヒットしないだろうな。トム・クルーズとかブラッド・ピット級のスーパースターでも起用しなければ無理じゃないかな。

2009/2