りぼんの読書ノート

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小説フランス革命2 バスチーユの陥落(佐藤賢一)

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聖職者の切り崩しに成功して「憲法制定国民議会」となっただけでは、改革は進みません。優柔不断のルイ16世が、なかなか態度を明らかにしないのです。貴族の特権を剥ぎ取って国庫を充たしたいものの、やはり国王にとって平民は遠い存在。状況を打開するべく、ミラボーロベスピエールが向かった先は、食糧不足や物価高騰に苦しむ民衆の爆発寸前のエネルギーが渦巻くパリでした。

ここで新たな重要人物が登場します。彼の名は、若き弁護士カミーユ・デムーラン。ひとかどの人物になりたいとの野望と優秀な頭脳を持ちながら、議員選挙には落選し、恋人との結婚もままならずにくすぶっているデムーランに、ミラボーが火をつける。「そんなことだから、女は君についてこない」

興奮状態で、パレ・ロワイヤルから蜂起を呼びかけたデムーランに、民衆が呼応します。それでも、武力を持たない民衆は軍に追い詰められて「あわやこれまで」となる寸前にパリの平民出身の兵士たちが合流。パリ市民兵隊が組織され、廃兵院を襲撃して銃を得た民衆が狙いをつけたのは、政府軍の武器が保管されているバスチーユ。

勢いづいた議会は「人権宣言」を採択しますが、民衆の暮らしは何も変わりません。なんと、パリの主婦たちがパンを求めて、ヴェルサイユに行進して国王に直訴してしまう。それだけではなく、女性に手出しできない政府軍を尻目に、国王一家をパリに連れ戻してしまうのです。「国王が自分の意思で平民と協力関係を結ぶことが重要」と、国王説得に努めていたミラボーの想定を超えてしまう展開となるのですが、彼はまだやる気マンマンです。この時点で「王政廃止」を望んでいた者など、ほとんどいなかったのですから。

一方で、平民といえども一味岩ではないことがはっきりしてきます。裕福なブルジョワ階級と、貧しい庶民の間の違いもめだってくるのです。果たして、革命の行方は・・。

いや~、おもしろいです。デムーランや、ダントンや、マーラーは、「くすぶり弁護士」だったんですね。でも、主婦たちにヴェルサイユ行進を呼びかけたのが、デムーランの恋人だったというのは創作ですよね。たしかテロワーヌという女性だったと記憶していますから。

2009/1