りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

美女と竹林(森見登見彦)

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あの森見さんが、美女はともかく、なぜに竹林? と思ったら、竹林とは深い関係があったのですね。

幼少時代には、父親に連れられて祖父の家の裏の竹林にタケノコ掘り。学生時代には文化人類学の演習で竹による茶筅つくり。大学院では竹の培養を専攻しただけでなく、竹取物語の美女に思いを馳せ、無謀突な琵琶湖一周サイクリングで、淋しい夜の田舎道の両側を埋め尽くす竹林に怯えたこともあるのです。

そんな森見さんが薔薇色の未来を夢見て、将来の竹林ビジネスの多角化経営の道を歩みます。とはいっても、万里の道も一歩から。まずは、先輩の女性である鍵屋さんの一族が所有する竹林を拝借し、友人の明石氏とともに、孟宗竹の伐採に挑むことになりました。

でも、2人とも机上の作業しかしたことのない身の悲しさ。悲しいほどに作業は進まず、ついには編集者一同の手を借りるはめに。でも、それでもやっぱり、進むのは妄想だけ。

そもそも、こんなのが「竹林伐採に関する計画書」じゃダメですよね。
1.竹林を偵察する
2.枯れた竹を選び出して、人斬りのように切りまくる
3.適宜休憩を挟んで清談にふける
4.倒した竹はいくつかに切り分けて、やるせない過去の思い出とともに脇へ置いとく
5.かぐや姫を見付けたら警察へ知らせる(相性が良ければ求婚)

作家・森見さんが、将来の竹林事業経営者である森見氏を、小説の登場人物のように突き放しているのも楽しい、半ば小説的なエッセイです。

ところで森見さんがコブラツイストをかける「もちぐま」というのは、りあむさんがプレゼントしたものなのでしょうか?

2008/10