りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

誘拐(五十嵐貴久)

イメージ 1

銀行から乗り込んできた上司にリストラ担当として指名された秋月ですが、退職させた先輩が一家心中してしまい、先輩の娘と仲の良かった自分の娘までもが自殺。傷心の秋月は復讐のために、大胆な犯罪に打って出ます。

なんと現職総理大臣の孫娘を誘拐して、折りしも歴史的な合意に至ろうとしている日韓条約の締結破棄と現金30億円を要求。日韓条約に敵対する北○鮮の犯行ではないかと騒然とする政府・警察を尻目に、秋月はあっさり要求撤回。総理の孫娘も無事に解放しちゃうんですね。でも、彼の狙いはここからはじまるのです。

誘拐犯罪の弱点は、身代金の受け渡しにあります。現金を直接受け取ろうとするときはもちろんのこと、ATMを使おうが、ネット銀行を使おうが、海外に送金させようが、どうしても姿を現さざるをえない瞬間。秋月の編み出した方法は画期的なテクニックなのですが、もうひとつ、孫娘を解放された総理が、どうして犯人の要求を飲むことにするのか、このあたりが興味を引っ張る部分です。

でも、この本は、五十嵐さんにしてはイマイチかなぁ。「ここまでするか」という真犯人(なんと秋月ではありません!)の動機が理解しがたいのは別にしても、肝心の真相やトリックがあまりストンと落ちてこないんですね。かなり、こじつけっぽい感じも漂います。この数年、かなりのペースで書いている五十嵐さんですが、書きすぎにはご注意を。

2008/10