りぼんの読書ノート

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グッバイ・サイゴン(ニナ・ヴィーダ)

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ロサンゼルスの郊外、ベトナムからの移民が集まり住むリトルサイゴンで出会った2人の女性。戦火のベトナムを逃れてアメリカに渡ったアインと、ユダヤアメリカ人のジェイナ。

2人に共通するのは悲惨な過去。ベトナム戦争の最中、サイゴンの家族は10代の時に崩壊、13歳で売春、17歳で出産、ボートピープルとなってサイゴンを脱出する際に幼い息子と生き別れ、アメリカに渡った後もべトナムへの密輸を手伝わされたりの危ない仕事をしていましたが、現在はギャングの一味になりかけている弟ティムを心配する日々をすごしているアイン。

一方のジェイナには、夫を殺害した犯人に誘拐されて暴行を加えられたという過去があり、勤め先の法律事務所の弁護士が倒れたために、収入がとだえそうになっていました。でも、この2人にはもうひとつの共通点がありました。それは、たくましい生命力!

カジノで常連だった弁護士が姿を見せなくなったことをいぶかしく思って、弁護士事務所を訪れたアインは、途方にくれているジェイナと出会います。そこから始まったのが、弁護士免許を借りて2人でリトルサイゴンに開いた法律事務所。

今まで法律とは縁のなかった人たちへのサービスは順調に伸びていき、稼げるようになりますが、リトルサイゴンのギャングからの取引の誘いを断ったことから、一味の嫌がらせを受けはじめ、ついには殺人事件まで起きてしまいます。ギャングへの復讐を図るアインでしたが・・。

アメリカで生活しているベトナム人の生活や考え方が生き生きと描写されていて、ベトナム人のコミュニティの様子が目に浮かんでくるかのようです。でもそれだけでなく、ジェイナという「他所者」を主人公の一人とした効果で、周囲のアメリカ人やメキシコ人が、どのように彼らを見ているかも明らかになってきます。

著者の夫がリトルサイゴンで弁護士を開業しているとのことで、本書に登場するエピソードは実際にあったことを基にしているそうです。登場人物はフィクションすけどね。

2008/10