りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

生ける屍(ピーター・ディキンスン)

イメージ 1

架空の英国王室に起きた怪事件の顛末を描いたキングとジョーカーが楽しかったので本書も手に取ってみたのですが、はっきり言って訳のわからない作品でした。サンリオSF文庫史上最も入手困難といわれるこの本が図書館にあったことには感謝なのですが・・。

有能であるのに感情に乏しく、淡々と実験をこなすだけで、別れた恋人からは「生ける屍」と呼ばれていた医薬品会社の実験薬理学者デビッドは、カリブ海のある島の研究所に派遣されることになりました。もとイギリスの植民地で、今はトロッターと呼ばれる独裁者が支配するその島は、観光地でもある反面、秘密警察による反乱者の弾圧が行われている一方で、呪術や魔法も信じられている狂気の島だったのです。

掃除婦殺害の濡れ衣で突然逮捕されてしまったデビッドは、ネズミで実験中だったストレスを鎮静させ、被験者を従順にさせてしまう薬物を、反乱者に向けて人体実験するよう強制されるのですが・・。

独裁者の強いる不条理劇と思われた物語でしたが、デビッドが魔力を使い始めるようになる後半には、一転して、残虐なスプラッター小説になってしまいます。種明かし的な部分も意味不明。「絢爛艶美な地獄めぐりを思わせる衝撃作」と紹介されていますが、ついていけませんでした。ただ一部のマニアックなファンからは評価が高いであろうことは、想像できます。

2008/9