りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2008/8 光州の五月(宋基淑)

毎年8月には読書量が落ちるのですが、今年はそこそこのペース。でも、ベスト本を5冊も選びきれないというのでは、質的にはどうだったか・・。しかも上位は全て、ノンフィクション系統ですからね。

ル=グウィンさんの新シリーズは、3巻まで読了してから評価しようと思います。

1.光州の五月 (宋基淑)
1979年の光州で、韓国の民主化運動は軍に圧殺されました。世に言う「光州事件」ですが、当時の傷跡は、弾圧された側にも弾圧した側にも残っています。真の犯罪者は、市民に対する発砲を命じた全斗煥らの軍首脳なのですが・・。心の傷跡も癒えないままに身を投げた女性と、溺死した当時の将校を「天国結婚」させるというエンディングの美しさが、韓国の伝統的な心情を鮮やかに描き出します。

2.RURIKO (林真理子)
昭和30年代に一躍スタアの座に躍り出た絶世の美女・浅丘ルリ子の半生を描いた小説です。裕次郎への一途な思い。小林旭との別れ。ひばりとの心の交流。石坂浩二との結婚と離婚。熱気溢れる映画のシーンと、信子(ルリ子の本名)の心情が交錯していく過程はドラマチック。等身大の女性であった信子は、やがて、大女優である「RURIKO」へと変身していきます。表紙の写真が、ゾクッとするほど魅力的。

3.カラシニコフⅠ カラシニコフⅡ(松本仁一)
テロリストや内乱で常に用いられ、「悪魔の銃」との異名を持つカラシニコフ自動小銃。本書は、アフリカ、南米、中東の「現場」の取材から、大国のエゴと国民不在の失敗国家がいかに民衆を苦しめているのか、なぜその場にカラシニコフが登場するのかを鋭く追及します。誘拐されて兵士に仕立て上げられた「子ども兵」や「少女兵」が、カラシニコフを手にして内乱を再生産していく過程には、身の毛のよだつ思いをさせられます。



2008/8/31