りぼんの読書ノート

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真田手毬唄(米村圭五)

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『影法師夢幻』とのタイトルで出版された小説が、文庫化に際して改題されたとのこと。

「花のようなる秀頼さまを 鬼のようなる真田が連れて のきものいたり鹿児島へ」。大阪夏の陣で秀頼と淀君が自刃した後に流行した手毬歌は、秀頼の鹿児島落ちの伝説を残しました。秀頼に馬糞を喰わせたことが縁で侍大将に取り立てられていた勇魚大五郎は、佐助とお才という忍びとともに、秀頼を追って兵庫湊へと急ぐのですが、その前に立ちはだかったのは、伊達政宗配下の猛将、片倉小十郎

第二章では時代は170年も下って、11代将軍・徳川家斉の治世。逃避行の際に潜伏場所を転々とした秀頼とはぐれてしまい、それ以来、秀頼の子孫を探し出すことが先祖代々の悲願であったという真田大助の7代目の子孫が、ついに不思議な隠し砦を見つけ出します。

そこにいたのは7代目秀頼を名乗る人物だったのですが、その傍らには7代目真田大助を名乗る武士が控えていました。実は秀頼の子孫を探して諸国を巡っていたのは7代目の勇魚大五郎だったのですが、このあたりから話はややこしくなっていきます。7代目大五郎は、7代目秀頼を江戸に連れ出そうとするのですが、果たしてその真意は?

170年前の因縁が巡り巡って、誰が誰の子孫で、誰が誰の影法師であるのか、訳がわからなくなってくるのですが、そこは米村さんの講談口調が冴え渡ります。往年の立川文庫を意識していると聞くと、後半急に血なまぐさくなってくる斬り合い場面の登場も理解できます。

それにしても、どうして170年も後の時代設定なのでしょう。それは、御庭番の倉地政之介や熊野忍びのお仙など、『錦絵双花伝』や、『退屈姫君伝』シリーズの登場人物をクロスオーバーさせて、松平定信の堅苦しさを笑い飛ばしたかったからなんですね。他の作品では、金の亡者のような田沼意次も笑い飛ばされちゃってるのですが。^^

歴史上の出来事も「こう解釈したほうが楽しいし夢がある」との庶民の願いを叶える手毬歌こそが、真田幸村が仕掛けた一番の大陰謀ということなのかもしれません。

2008/8