りぼんの読書ノート

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文学賞メッタ斬り 2008年版(豊崎由美、大森望)

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シリーズ4作めともなると、2人の言いたい放題も、もう新味はありません。巻頭対談に登場した長嶋有石田衣良も、私の読書対象ではないので興味は薄かったですし。

「大変よくできました」との副題は、川上さんと桜庭さんという前回の芥川賞直木賞受賞者が予想通りだったということ。となると、選考委員への悪口もいつもよりマイルドにもなりますし、もうこのシリーズも「終え時」なのかもしれません。

数年前に、このシリーズの第一作を読んだときには衝撃的だったんですよ。数ある日本の文学賞を系統的・傾向的に位置付けて、「文学賞の相対的な価値」を理解させてもらったことは、「何を読むか」の判断基準となりました。それだけでなく、世界の文学賞を受賞した小説を紹介してもらったのも大きな収穫でした。ブッカー賞や全米図書賞の価値を再認識し、カズオ・イシグロ、グレアム・スウィフト、コーマック・マッカーシー、アニー・ブルー、イアン・マキューアンらの作家と著作を教えてもらったのも、このシリーズの第一作でのこと。

お2人とも海外文学に詳しいので、『世界文学賞メッタ切り』でも企画すればいいのに。でも、選考委員のことをけなせないと、読み物としてはあまりおもしろくはないかも。

そういえば、豊崎姉さんが「今年の心の直木賞」と大絶賛していたミノタウロスの著者である佐藤亜紀さんの存在を教えてもらったのは、やはりこのシリーズの第一作でのことでした。豊崎姉さんに好かれる女流作家はみな不幸になってしまうそうですが、『ミノタウロス』は今年吉川英治新人文学賞を受賞しましたね。もっと評判が高くてもいい作家です。

2008/7