りぼんの読書ノート

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わたしを愛した狼(ケリー・アームストロング)

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本書のヒロインは、世界でただ1人の狼女であるエレナ。人狼には、親からの遺伝を受け継ぐ先天性と、咬まれてなる後天性があるのですが、人狼として生まれるのは100%オス。通常の女性は、咬まれて人狼に変身する苦痛に耐えられないとのことで、彼女が唯一の「例外」。「たった1人」という希少性がこの世界でものすごい価値を持っていることは、言うまでもありません。

幼い頃からの孤児だったため普通の家庭を築くことが夢だったエレナは、かつての婚約者であったクレイに咬まれて人狼となってしまって傷つき、クレイを許せずに「群れ」から飛び出し、正体を隠して普通の恋人と普通の恋愛ができるのではないか・・と思っ始めた矢先に、「群れ」のリーダーのジェレミーから召集を受けてしまいます。「群れ」は危機に遭遇していたのです。

サイコ変質者たちを人狼に仕立て上げ、エレナが育った「群れ」を襲おうとする「はぐれ狼」たちとの戦いもスリリングで、上下2巻という長さを感じませんが、エレナの感情の動きがいいですね。

彼女を側においておきたいというだけの身勝手な理由でエレナを咬んでしまったクレイと、普通の人間として彼女を愛しているフィリップのどちらを選ぶのかという問題だけでなく、時折変身して野山を駆け回りたいという生理的欲求を隠して人間社会で生きていく大変さや、病院にもいけない、食欲を隠さなくてはならないなどの色んな問題と折り合いをつけるためにエレナは悩むのです。

この種の非人間が主人公となるサスペンス、とりわけ女性が主人公で恋愛も絡む物語を「パラノーマル・サスペンスロマン」と呼ぶそうです。男性を主人公とした物語が多かったジャンルですが、こういうところにも女性の進出が起きているんですね。

「群れ」の人狼たちは、広大な森林を有した私邸を保有するなど、貴族的な生活を営んでいるように描かれています。こんな館で、ふさふさの毛皮を持った「群れ」の仲間とともに皆でまるくなってまどろむのは気持ちよさそう。アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化されるそうです。それを知ったのが、読み終えた後で良かった。ちょっとイメージが違うと思えますので。^^;

2008/7