大学生の藤村ゆきなの前に、2年前に死んだはずの兄が突然現れて、生きていた頃と同じように普通に暮らし始めます。いったい何が起きているのかわからないままに、兄との不思議な生活に心地よさを感じていたゆきなでしたが、ある日、自分が兄の死の真相を全く覚えていないことに気づいてしまいます・・。
9つの文芸作品は、その時々に、ゆきなが読んでいる兄の蔵書。どれも古い作品なのですが、その時々の、ゆきなの心の動きに触れてくる。料理上手な兄の作る手料理のおいしそうな香りと、古本特有の匂いが混じりあって、優しい兄の、妹への思いに癒されるかのような一冊です。
各章のタイトルにもなっている、9つの文芸作品のタイトルをあげておきましょう。8作しかないのは、『山椒魚』が改定前と改定後の2つに分かれているから。