りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

航路(コニー・ウィリス)

イメージ 1

臨死体験をテーマにした物語ということでなかなか読む気が起きなかったのですが、そんな心配は一切不要でした。文句なしにおもしろい! 長さも気になりません。

前半はコミカルな展開なのです。認知心理学者であるジョアンナは、NDE(臨死体験)の原因を科学的に解明しようと臨死体験者の聞き取り調査をしているのですが、来世から迎えが来るという、捏造的な臨死体験本で稼いでいるマンドレイク教授と対立しています。なんせ、彼が誘導尋問をしてしまった体験者は、全然使い物にならなくなってしまうのですから。

ほかにも、ER勤務の親友の看護士や、災害マニアの少女や、海軍時代のビックリ話を延々と話し続ける老人や、昏睡状態の男性や、アルツハイマーを病む高校時代の恩師や、彼の姪で薄幸の美女などの個性的な人物たちが、生と死のドラマを織り成していきます。

一方で、人工的に臨死状態を作り出して、大脳生理学的に臨死を解明しようとしているハンサムなリチャード医師のプロジェクトに参加したのはいいけれど、被験者として集まってくるのは奇人変人ばかり。役に立つケースのあまりの少なさに業を煮やしたジョアンナは、自分自身を被験者として、薬物を用いた臨死体験をしようと決意。

ところで、今までヒヤリングしてきた臨死の「コア体験」には共通点がありました。表現できない音、暗いトンネル、扉の向こうの眩しい光、突然の帰還・・。それらに既視感を覚えて何度も臨死体験を繰り返し、ジョアンナが突き止めた真相は、想像を絶していました。それはなんと、「タイタニック」だったのですから。

ここまででも驚天動地です。なぜ臨死体験が「タイタニック」なのか・・。もちろん、ちゃんと説明がつくのです。(あ~! ネタバレ書きたいっ!)さらに、ついに臨死の真実を発見したジョアンナが第2部の最後に巻き込まれたのは「こんなのあり~っ!」と、悲鳴をあげたいくらいの事件なんですから!!!(あ~! とってもとってもネタバレ書きたいっ!)

とにかく、臨死というものをこれだけリアルに書いてこのおもしろさ。しかも大感動! コニー・ウィリスさんの最高傑作です。

2008/7