りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

DOJO-道場(永瀬隼介)

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主人公は、腕っ節はめっぽう強いが「押され」に弱い、お人よしの空手家・藤堂忠之29歳。でも、「空手バカ一代」的な物語ではありません。

藤堂は世界的に有名な空手流派で黒帯を取った、実戦空手のエリートではあるのですが、勤めていた会社をリストラされた所に、空手道場を開いている先輩から、留守の間だけ道場生の面倒をみてくれないかと頼まれ、約束の期限を過ぎても帰ってこない先輩を待ち続けて、金にもならない潰れかけの道場を建て直そうと奮闘する物語。

でも、道場にやって来る入門者は、ちょっと変わった者ばかり。オヤジ狩りにあって強くなりたいと願う中年会社員や、総合格闘技に転身を計っているロートルのプロレスラーや、危ない秘密を抱えた超美人のロシア人バレリーナや、ガールフレンドをレイプされて復讐に燃える高校生や、ハゲタカファンドのエリート。そもそも空手というのは、心身鍛錬のために子どもの頃から始める人が多いですよね。だから、いい大人がある日突然、空手道場に入門したいと思うなんて、ワケアリです。

「自分の事情」を頼み込む入門者に対して、「押され」に弱い藤堂はNOと言えません。だから、かなり危ない筋まとも関係しちゃったりするのです。藤堂に道場を預けっぱなしの先輩・神野は、元日本チャンピオンで、それこそ神の粋に達したような実力者なのですが、こちらも藤堂以上に不器用で世渡り下手ということも後で明らかになってきます。

彼らが巻き込まれるトラブル解決も読ませる作品に仕上がっていますが、何といっても「格闘小説」らしく格闘場面の描写が圧倒的な迫力。その分、彼らの実生活との落差の対比が面白い作品です。

2008/4(帰国便にて)