りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

神の獲物(C・J・ボックス)

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イエローストーン国立公園に隣接する広大なワイオミングの大自然と家族をこよなく愛する、心優しい猟区管理官ジョー・ピケットが主人公。「自然保護ミステリー」とも言えるシリーズの第3作めです。

ワイオミングの牧場や山林にも、エネルギー高騰という実世間の影響が現れてきます。この地域の地下には大量のメタンガスが埋蔵されていて、開発ブームにさらされます。現実の話のようで、オイルメジャーも次々に参入しているようです。

そんな中で、不思議な事件が頻発。外科手術のような正確な切り口で顔や性器を切り取られたムースの死体が発見され、普通なら熊やコヨーテやハゲタカに食べられているはずなのに、その痕跡もありません。被害は牧場の牛や馬にも及び、ついには人間にも被害者が出てしまいます。宇宙人によるキャトル・ミューティレーションなどとオカルティックな噂も飛び交う中、愚直だけれど現実主義者のジョーが発見したのは、殺害された2人の意外な関係。2人とも環境調査会社で接点があったんですね。

ジョーの愛犬さえもが、僅かの間に毛が真っ白になってしまうという恐怖を味わった不思議な現象と、殺人という犯行はどう結びつくのか。犯人の目的は何だったのか。意外な展開や意外な真犯人だけではなく、やはり大自然には、ある意味で人知を超えた何かがあることを信じたくなるような幕切れまで、一気に読ませてくれます。

どんな逆境にあっても夫を信じている、聡明な妻のメアリーベスがいいですね。第1作で絶滅保護動物を守り抜いた大自然の申し子的存在の姉娘シェリダンも、おしゃまな妹娘ルーシーも、両親の愛に守られて元気です。

このシリーズをずっと翻訳している野口百合子さんは、リンドキストの箱舟(アン・ハラム)など、自然保護をテーマにした作品を多く扱っている方なんですよ。

2008/4(シカゴ空港での待ち時間で)