りぼんの読書ノート

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グラデーション(永井するみ)

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ごく普通の14歳の少女が、恋愛や、友情や、家族や、進学や、就職といった、誰にでも訪れる問題をひとつひとつ受け止めながら、成長していく様子を丁寧に綴った小説です。

主人公の真紀は、まじめで地味な女の子。明るくて人好きのする年の離れた姉と対照的な性格で、母とも話がはずみません。クラスの中でも、ゴシップや男の子の話は苦手で、みんなと盛り上がることは少なくて、自分をネクラな人間と思ってコンプレックスを感じてしまうタイプ。それでも、真紀のいいところに気づいてくれる友達もいるし、そういう彼女を好きになる男性だって現れます。

高校で絵画の楽しさに触れて美大に進む真紀が、自分という個性をだんだん色濃くしていき、自分のやりたいことを見つけるようになる過程が、「グラデーション」というタイトルの意味なのでしょう。

宮下奈都さんの『スコーレNo.4』とティストが似ている、好感の持てる作品でした。ただ主人公が受身過ぎるところが、ちょっと物足りないですね。真紀のモデルが美大を中退して作家になった著者であるなら、もっと激しい葛藤やドラマがあったのではないかと思うのですが・・。

2008/4