りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ドリームマシン(クリストファー・プリースト)

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タイトルが似通っているのでスペースマシンの姉妹編かと思ったら、全然別もの。邦題を似せてつけただけのようです。原題を直訳すると「ウェセックスの夢」。

本書の出版時点(1977年)では近未来だった1985年に行われたプロジェクト。これは集団の意識を未来に向けて投射することによって、未来を予測するというもの。でも後半になって、ある個人の意識によって未来が変わってしまう場面が出てくるので、むしろバーチャルリアリティ・シミュレーションと言ったほうが良いのかもしれません。

参加者は、投射された未来世界を維持するために、交替で現実世界に戻ってくるのですが、その中のひとりハークマンという男が未来世界に居座ってしまって、現実の過去に戻ってこなくなってしまう所から問題が起こります。

メンバーのジューリアは、ハークマンを連れ戻すべく、未来世界で彼に接近。しかし彼女につきまとうストーカー的な元恋人のポールが、理事会の推薦を得てプロジェクトに関わるようになって、問題はさらに複雑になっていきます。野心的な彼はプロジェクトに介入して、投射世界を変容させようとたくらんでいるのです。

投射世界が未来なのか、バーチャルリアリティなのかはともかく、そこにも存在している投射マシンを起動させて、過去への逆投射が行なわれることになるのですが、そこで何が起きるのでしょうか。メンバーが戻ってくるのは現実にあった過去なのか、未来によって歪曲された過去なのか、それとも誰かの無意識によって構成された世界なのか、その時にその世界にも存在しているメンバーの自意識はどうなってしまうのか・・。

全く「ややこしや~」の世界なのですが、どうやら解釈は自由なのかもしれません。ただ、本書のテイストは、タイムマシン小説のパラドックスとは全く異なっています。

それにしても150年後の未来で、大地震の結果、コーンウェル半島がイングランドから切り離されて「ウェセックス島」となっているのはともかくとして、世界が社会主義圏とイスラム教圏に二分されているというのはゾッとする構図です。

2008/4