りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

私の男(桜庭一樹)

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直木賞受賞作ですが、読んでて辛かった。暗い北の海から逃げてきた「父・淳悟」と「娘・花」の陰湿な関係の終わりと始まり。

背徳を描いた文学は数多くあり、深い感動をもたらす作品もあるけれど、この本は生理的に受け付けられませんでした。だって、いくら「血の依存」とか「私の男」とか言っても、精神的に病んだ25歳のロリコン青年が、わずか9歳の実娘と関係を持って、娘の性格までも歪めてしまうに至る物語なんですから、おぞましさを感じてしまうだけ。

時系列的には、25歳になって嫁いでいく娘のもとから、過去の忌まわしい「荷物」とともに父親が去っていった場面で終わる本書ですが、娘の喪失感すら感じられない。現在から過去に遡る構成も、すでにサラ・ウォーターズの『夜愁』が出ていますから、新鮮さは感じませんでした。

桜庭さんは、深い心理描写よりも、事象の展開を得意とする作家のようですので、本書のような内容は「持ち味」ではないのかもしれません。赤朽葉家の伝説とか青年のための読書クラブなどは好きな作品ですので、次作に期待したいですね。

2008/1