りぼんの読書ノート

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カッシアの物語 2(アリー・コンディ)

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温暖化によって多くの人類が滅亡した後に、数々の教訓をもとに再建された社会の枠組みである「ソサエティ」は、安全な生活と引き換えに人々の自由を大きく制限していました。そんなコントロール社会の象徴ともいうべきものが、結婚相手を決められるマッチング。17歳の少女カッシアの相手に選ばれたのは、誰もがうらやむような幼馴染のザンダーだったのですが、彼女はあるアクシデントから近所に住む少年カイに惹かれていってしまいます。

 

しかしソサエティから差別を受ける逸脱者であったが故に、カイは兵士として外縁州の戦地に送られてしまいます。カッシアはカイの後を追うために、自ら志願して外縁州に近い労働キャンプへ向かうというのが、衝撃的な前巻のエンディング。カッシアの静謐なモノローグによる第1巻とは対照的に、第2巻ではカッシアとカイの冒険活劇が交互に綴られていきます。

 

ユタ州生まれの著者が描く外縁州の大自然は、イエローストーンやグランドキャニオンを想像すれば良いのでしょう。戦場から逃亡したカイと、労働キャンプを抜け出したカッシアは、それぞれ知り合いとなった者たちと共に、大峡谷地帯を横断していきます。そしてついに2人は出会い、ソサエティに抵抗する反乱軍「ライジング」に身を投じるのですが・・。

 

自由な選択の制限への疑問から始まった物語は、ついに反乱へと行き着いてしまいました。『ギヴァー4部作』に触発されて書かれたディストピア小説とのことですが、『ハンガー・ゲーム』に近づいてきたようです。とはいえ、それらは全てラブロマンスの背景にすぎないようにも思われます。雰囲気が一番近いのは、ヴァンパイアと狼男に愛された少女の物語である『トワイライト』のようです。

 

2021/10