りぼんの読書ノート

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サウンド・オブ・ミュージック アメリカ編(マリア・フォン・トラップ)

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1938年、アメリカに亡命した一家を待っていたのは、ゼロからの出発。家も財産も市民権も持たない一家ができるのは歌うことだけでした。はじめは小さな音楽事務所のマネージメントで人気も上がらず、マリアの妊娠発覚もあってコンサートはキャンセル。ビザ延長が認められずに一時出国を余儀なくされたりもしています。

コンサート活動が軌道に乗り始めたのは、大手音楽事務所のオーデションに通って、大陸横断ツアーを成功させた1940年くらいからでしょうか。翌年には、故郷と風景が似ているというヴァーモント州ストウの農場を購入。この時は自分たちで家を建てました。

1943年には長男と次男が徴兵されて、女声だけの合唱団に。この年、アメリカ市民権を申請。翌年には、取り壊される予定だったストウ郊外の米軍キャンプを借りて、「トラップ・ファミリー・ミュージック・キャンプ」を開催。どれも綱渡りであり、しかも英語もまともに話せない時期のことですから、マリアさん、精力的です。というより超人的です。そして実際の活動も、本書での正直な語り口も、あまりにも魅力的です。

1948年には夫ゲオルクが死去。亡き夫への手紙として書かれた一章は、愛情と追悼に溢れています。この頃から子どもたちは結婚ラッシュ。合唱団活動もミュージック・キャンプも1956年で終わりますが、その前に書かれた本書が大評判となって、映画化されたというわけです。

マリアは1987年に87歳で亡くなりましたが、彼女の一家はアメリカに根を張りました。ストウには一家の名を冠した高級スキーロッジがあり、ひ孫達が集う「フォン・トラップ・チルドレン合唱団」も活動しているとのことです。

2014/5