りぼんの読書ノート

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砂糖の空から落ちてきた少女(ショーニン・マグワイア)

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ウサギ穴に落ちたり、衣装ダンスの奥に潜り込んだり、竜巻にさらわれたりして、異世界での冒険を体験して戻ってきた子供たちが、現実世界に適応することは困難なのでしょう。皆が皆「おうちがいちばん」という訳ではないのです。そんな子供たちに救いの手を差し伸べる学園を舞台とする物語のシリーズ第3弾です。

 

ある日、空から学園の池に落ちてきた少女リニは、自分がスミの娘であり、学園にいるはずの母親をお菓子の国に連れ戻しに来たと訴えます。しかし不思議少女スミは第1巻で起こった騒動で亡くなっており、子供などいるはずもないのですが、リニは本当の事を言っているようなのです。スミのいない世界では自分は次第に消えてしまうと言い、その兆候すら現れているのですから。

 

学園長の老女エリノアは、第1巻でも活躍した妖精界帰りのケイド、死者の国マリポーサ帰りのクリストファーに加えて、沈んだ世界の住人だったナディアと海溝国で人魚だったコーラを加えた4人に、スミを取り戻してくるように依頼します。リニを加えた5人は、まず死者の殿堂に戻ることができたナンシーを訪ねることにするのでした。

 

さまざまな異世界は、ロジック界とナンセンス界に大別されるようです。通常は異世界への扉は固く閉ざされてるのですが、典型的なナンセンス界で何でも起こりえるお菓子の国からやってきたリニは、なんと菓子職人に「どこでも行けるビーズの腕輪」を作ってもらったとのことで、5人は異世界への旅を続けることができたわけです。死者の殿堂を統べる王と女王からヒントを得た旅の仲間たちは、スミを復活させるためにお菓子の国へと向かうのですが・・。

 

著者のファンタジー愛が詰まったこのシリーズはもともと3部作でしたが、高い評価を得たために続編の刊行も予定されているとのこと。本書の中でちょとだけ示された異世界の構造や秘密も明らかにされるのでしょうか。

 

2021/1