りぼんの読書ノート

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漁夫マルコの見た夢(塩野七生)

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塩野さんの名前があったので借りてみましたが、よくわからない本でした。おそらく17世紀の、爛熟期のベネチアが舞台の、綺麗な絵本です。ほとんどストーリーはないのですが、内容は結構アダルトですので、どのような人をターゲットにした本なのか、謎ですね。

リド島に住む若い漁夫マルコが、親方の代理ではじめてヴェネチア本島の貴族の家に牡蠣を届けにいく物語。ヴィーナスの絵から抜け出たような美しい奥方に誘惑されて、仮面舞踏会の夜に、めくるめく体験をする物語。海運国ヴェネチアでは、主人たちが海外に長期滞在をしていることが多く、奥方たちには、かなりの自由が許されていたんですね。ただし、本気にならなければ・・です。

こんな時代、漁夫マルコのように、一夜限りの夢を見ることができた青年もいたのでしょうし、そこにピュアなロマンも生まれたのかもしれません。でも、それ以上には踏み込みもせず、表面をサラッと撫でてみただけの「綺麗な大人の絵本」にすぎません。

本書は1979年に出版された本の復刻版。『ローマ人の物語』はもとより、『海の都の物語』も『東地中海三部作』もまだ書かれていない時期ですし、水田秀穂さんの挿絵は美しいのですが・・。

2007/10