りぼんの読書ノート

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国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ(河治和香)

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「侠風」と書いて「きゃんふう」と読ませるタイトルは、主人公の娘が気が強くて跳ねっかえりなのに純情な「おきゃん」であることをあらわしてしています。

主人公は、人気の浮世絵師・歌川国芳の娘・登鯉(とり)。国芳というと、巨大な骸骨が襲い掛かってくる「相馬の古内裏」が強烈ですが、他にも八犬伝水滸伝に着想を得た武者絵など、ケレン味たっぷりの印象。こんな父親とちょっと変わった弟子たちの様子が、やはり絵師を志している娘の視点から綴られます。

この時代は、デフレ誘導政策である天保の改革の真っ最中。贅沢品が次々と禁止になる中で、浮世絵も芝居も例外ではありません。日に日に窮屈になっていく世相に抗する反骨精神が、引き起こす騒動が縦糸。国芳と幼馴染という北町奉行遠山金四郎も、お裁きの場に登場しちゃいます。

横糸は、登鯉の恋愛です。ハンサムだけどつれない弟子に片恋したり、粋な彫り士の青年に夢中になって、身も心も捧げるのに、彼に対するライバル心も捨てきれない「おきゃん」ぶり。でも、その「おきゃんさ」が、仇になることもあるのです・・。

恋人と別れることになっても意外とサバサバしている登鯉を見て、代わりに国芳が涙を流します。「あいつはまだ若いから、この先こんなにいい男は二度と現れないかもしれないことが、わかっていない」。父親の言葉と思うと、めちゃくちゃ粋ですねぇ~。三連パネルの大活劇絵のような、色彩豊かな作品でした。

2007/10