りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

蛇行する川のほとり(恩田陸)

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4人の女子高校生が交互に語ることによって明らかにされる、12年前の事件の真相・・・恩田さんの得意のパターンです。

第一章は、毬子の視点。憧れていた先輩の香澄と芳野に誘われて、演劇祭の舞台背景を仕上げるため「蛇行する川のほとり」にある香澄の家での夏合宿に参加した毬子。12年前、その場所で亡くなったのが香澄の母であり、もう一人同じ夜に亡くなっていた少女の死に毬子も関係していた事がわかって愕然とします。

第二章は、芳野の視点。12年前の夜以来、香澄とは「鎖で繋がれた」という芳野は、親友の香澄のことも、純粋な毬子のことも守ろうとするのですが・・。

第三章は、毬子の親友である真魚子の視点。唯一、12年前の当事者ではなかった真魚子は、毬子のため、事件の真相を見届ける役目を負うことを決意します。野外音楽堂に完成した舞台の上で、芳野は徐々に意味が明らかになってきた過去の記憶をもとにして、事件の真相に迫ります。それこそが「真実」に違いないと思われるのですが・・。

第四章は、香澄が語る「真実」です。なるほど、こうきましたか。螺旋状に真実に近づいていく物語も悪くないけど、恩田さんの作品としてはそれだけでは「並」のレベル。この本の良さは、過去に遡るひと夏の経験を経て、大人の女性へと変わっていく少女たちを、見事に描いていることかな。

恩田さん自身が多感な時代に、どのような少女でありたかったのか、どのような女性になりたいと思っていたのか、客観的に自分を眺めながら真剣に考えていたのだろうと思わせてくれる一冊です。

2007/9