りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

建てて、いい?(中島たい子)

イメージ 1

PMSに苦しんだり、漢方薬で身体を癒したり、働く女性は楽じゃない。中島さんの小説は、どれも、女性特有の悩みを等身大で描いてくれて共感してしまうのですが、今度のテーマは、「家を建てる」!

アパートの階段でゴミ袋を持ったまま滑って転んだ瞬間に、空を見上げながら「居場所が欲しい」と思う30代の真理。モデルハウスを見に行って、アンケートに答えようとしたら、いきなり、女性には「奥様」以外の項目がない! 独身女性であることを告げた瞬間、住宅会社のスタッフは凍りつく。「家を建てたい」と両親に言ったら、「結婚するの?」と訊かれちゃう。「家」というものは家族のためのもので、独身女性が「家」を建ててはいけないのでしょうか。

でも、できないことじゃないんです。建築史上有名な家だって、一人で住むための家が多いとのこと(吉永小百合さんのCMに登場するような家かなぁ?)。一人暮らしなら家族のために妥協する必要はないし、自分の好みの家を好きなように建てればいい。真理が建てた家はちょっと変わった家だったけど、自分に合った家を建てる過程で彼女も成長できました。

実際に脚本家として働いている著者の、等身大感覚はいいですね。併録の「彼の宅急便」では、「20代の頃は平気でダムを壊したりしてたのに、最近では夫婦喧嘩でお茶碗ひとつ壊すような脚本を書くのもためらう」なんて、実感ありすぎです。

2007/9