りぼんの読書ノート

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天使の牙から(ジョナサン・キャロル)

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「人生で欲しいと思うものには必ず牙があるのよ」。絶頂期にハリウッドを引退した元女優でまだ若いアーレンは、ユーゴ内戦を取材する魅力あふれる戦場カメラマンと出会い、真摯な恋心を抱くようになっていきます。

「死にかけてるのってどんなものかって?もう生きてないんだ。バランス取ってるだけ」。癌で余命わずかな往年のTVスター・ワイアットは、なぜか夢の中に現れる死神に気に入られてしまい、不思議な体験をすることになります。

2つの物語が交差した時に、何が起きるのでしょう。「死」は誰にでも訪れるものの、訪れ方や時期は人それぞれであり、気まぐれに、暴力的に人生を奪い去っていく存在であるかのようです。「死」という絶対的な存在と向き合った時、人はどう振舞うのでしょう。

強いてこの本を分類するならば、「ダーク・ファンタジー」とでもなるのでしょうが、優れたファンタジーが著者の人生観・死生観を自ずと明らかにしてしまうように、本書もその例外ではありません。主人公たちをどん底まで突き落としてしまう展開には、ドキッとさせられますが、読後感は悪くない。ほんのりと希望を感じさせてくれるエンディングはお見事です。

2007/9