りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ちんぷんかん(畠中恵)

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しゃばけシリーズ」の第6作になります。「いつも病弱でこまめに死にかけている」若旦那・一太郎と、若旦那を囲む妖(あやし)たちの物語・・との枠組みは変わっていないのですが、「大江戸妖怪ミステリー」の印象は薄くなりました。その分、若旦那の周囲の人々の成長と、別れの予感が語られ、さらには、人がいずれ死んでいく存在であることが強調されています。

火事の煙を吸ってついに三途の川まで行ってしまった若旦那が、袂に入ったまま一緒についてきてしまった鳴家やお獅子を連れて現世に帰還する顛末を描く、冒頭の「鬼と子鬼」が、すでに何かを予感させます。

さらに「今昔」では、長崎屋に現れて若旦那に悪さをしかける式神を操る陰陽師退治にからんで、異母兄・松之助の縁談話や、幼馴染である三春屋の栄吉が修行に出る話が語られていきます。

若旦那の両親の出会いを描いた「男ぶり」で、長崎屋が先代から有名な親馬鹿であり、お守りが妖馬鹿だったことが判明したのは楽しかったけど、最後の「はるがいくよ」での、短い命である桜の花びらの精との出会いは、しんみりする物語。

そして、若旦那がある重大な決断をするに至ります。やはりこのシリーズの終わりは近いのでしょうか。

2007/8