りぼんの読書ノート

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最後のウィネベーゴ(コニー・ウィリス)

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傑作タイムマシン小説犬は勘定に入れませんの著者による中編作品集。

表題作は、犬が絶滅してしまった近未来のアメリカで、15年前に亡くした愛犬の姿をはからずも見出すことになった、孤独な男の物語。やはり各州で禁止され、絶滅しつつあるキャンピングカー(その代表車種がウィネベーゴです)の取材途中で発見したジャッカルの轢死体が、様々な想いを呼び起こしていきます。滅び行くものへの哀悼を深く感じさせる一作。

冒頭の「女王様でも」では女性の月経が人工的に消滅させられた時代に月経復活をめざす「サイクリスト」なる団体を登場させて皮肉を利かせ、「タイムアウト」では時間子を発見した科学者の不思議な実験を描いてクスッとさせてくれます。不倫願望が時間移動とどう関係しているのか?

かと思うと「スパイス・ポグロム」は、ソニーミサワホームが製作した狭苦しい宇宙ステーションを舞台に異星人との遭遇を描くドタバタコメディ。モノを置くスペースもないのにショッピングには目がなく、ひとつの単語にひとつの意味しか理解できないという異星人はまるで日本人のようですし、その通訳に日本人があたっていて交渉が難航しているなんて、ヒネリが効きすぎです。

著者の多才さを、思う存分楽しめる作品集になっています。

2007/8