りぼんの読書ノート

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幻のマドリード通信(逢坂剛)

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カディスの赤い星』で直木賞を受賞する直前の、20年前の短編集。4作品ともスペイン内戦に関連したテーマであって、著者の原点ですね。

スペイン内戦終結後、再開された日本帝国公使館で発見された焼死体の謎を描いた表題作は、反ファシズム民主政府内でのコミュニストアナキストの対立を軸に、日独防共協定をめぐる裏面史につながる作品です。

カディスからの脱出」などの3編は、内戦終結後、数十年たっても癒えない内戦時代の傷をテーマにしながら、反政府組織、フラメンコダンサー、日本人ギタリスト、秘密警察など、得意のプロットを縦横無尽に駆使してくれます。

その集大成が『カディスの赤い星』であり、これは傑作。その後書かれた「スペインもの」も、なかなかいい作品が揃っているのですが、最近ではネタが尽きてしまったのか、犯罪小説や時代小説なども書いていて、こっちの方は、全然おもしろくないんですね。やっぱり「スペイン内戦もの」の作家です。

2007/8