「いつの国でも、どの時代でも子供たちは生まれる。それは戦争の時代であっても変わらない」。
映画「ボレロ」で、ナチの軍楽隊長の子を宿したクラブ歌手が、頭を丸刈りにされて解放後のパリから追放される場面がありました。フランスで20万人いるといわれる「ボッシュ(ドイツ人)の子」の大多数は、生れ落ちた時からいわれのない差別を受け、もちろん母子家庭であったため経済的にも苦しみ、自らのアイデンティティに悩みながらの生涯をおくらざるを得なかったようです。
本書は、現在「全国戦争児友好会」の広報担当を務めている著者が自らの人生を振り返り、自分がドイツ兵の娘であることを初めて知ったときの衝撃や、母の再婚、父との対面、大人になってからの結婚・離婚、そして、父の死とその家族との交流とを、静かに語った作品です。
著者が本書を自費出版した理由は、誰も触れたがらなかったこの問題を広く世間に認知させたいとの思いがあったからだそうですが、アジアと較べて個人の尊厳を重んじる(と思われる)フランスですらこの問題がタブーであったことに、いまさらながら驚かされます。
振り返ってみると、日本では、アジアでは、どうなのでしょう。残留孤児問題や従軍慰安婦問題は大きな話題となっていますが、それだけではなかったはず。やはりタブー視し続けるべき問題なのかどうか、悩ましいところです。
2007/7