りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

くうねるところすむところ(平安寿子)

イメージ 1

求人情報誌の編集の仕事も上司との不倫の恋も行き詰まって、一人で飲みつぶれた30歳の誕生日の夜、梨央の人生は変わりました。

全然、カッコイイことじゃない。工事中の建設現場に入り込み、高い所に上って叫んでみようとしたら、足がすくんで動けなくなっちゃったのです。でも助け出してくれたトビ職の男性に一目惚れして、人生のリセットを決意。建設業界に飛び込みます。梨央が入った中小工務店では、離婚した亭主の後を継いだ女社長が無謀なリストラを断行した直後で、会社の仕事がぐちゃぐちゃ状態。調整業務の得意な梨央は、事務員からいきなり現場監督に就任!

家を建てるということは、トビ、大工、左官、電気工などの共同作業。無理を言い放題の施主たちだって、一生をかけた買い物をする訳だから話をきちんと聞いてあげなきゃならない。まさに建設現場監督はコーディネーション業務なのです。でも、調整能力だけで、現場監督が務まるほど甘くはありません。ようやく仕事の面白さを理解して、一から勉強して本気で仕事しようと思ったのに、女社長さんは赤字の工務店を廃業宣言しちゃいます。

「98%はシビアでも、2%はやり甲斐を感じる瞬間があるはずですよ。そうじゃなかったら、誰もこんなくそったれ人生を生きてませんて。」 梨央は懸命に訴えるけど、仕事はどうなっちゃうのでしょう? 一目惚れしたトビの男性とは、交際すら始まってもいないのに・・。

ありえなさそうな話だけれど、おもしろい。だいたい最近の「お仕事小説」は、女性作家が女性を主人公にして書くもののほうが、男性ものより、ずっとずっと出来がいいのです。伝統的な雇用制度が崩れているのに、過去の価値観に捉われて戸惑う男性たちより、チャンスが広がった女性のほうが、実社会においても元気なせいでしょうかしら。

2007/7