りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

奇術師(クリストファー・プリースト)

イメージ 1

最近出版された双生児を読み、この人の面白さを再認識して読み返しました。この本は「幻想小説」に分類されるのでしょうが、語り口の巧みさも、仕掛けの面白さも、やっぱり超一流。結末を知っていても、ぐいぐい引き込まれてしまいます。

5部からなる小説です。1部、3部、5部がいわゆる「外側の物語」になっていて、現代のアンドルーとケイトが、100年前に奇術師として競い合っていた、それぞれの先祖の物語を読み解いていきます。どちらの先祖も、自身の死後にまで手記をつけていた形跡があるというのは、どういうことなのでしょう。

第2部はアンドルーの先祖であるアルフレッドの手記。「奇術師とは見せたいものだけを見せるもの」と自ら語るように、彼は、自分の得意技である「瞬間移動」イリュージョンに隠された秘密を、最後まで明かしてくれません。

第4部は、ライバルであったルパートの手記。アルフレッドとの確執が、どうしてここまでこじれてしまったのか、アルフレッドの「瞬間移動」の秘密は何だったのか。それらは第4部の最後に明らかになります。彼がアルフレッドに対抗して生み出した、全く異なる手法による「ルパート版瞬間移動」に隠されていた恐るべき秘密も・・。

現代の主人公たちも、自分たちにまつわる秘密を知らないのです。このことが、巧まずしてすっかり読者をミスリードするのですが、こんな設定にするなんて、もちろん著者の超絶技巧。

著者自身、双子の親であるようです。それが『双生児』や本書のような物語を著した理由なのでしょうが、本書のキーワードは「双子」というより「分身」ですね。「プレステージ」の題名で公開されている映画も見てしまいたくなりました。

2007/7再読