りぼんの読書ノート

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ジェネラル・ルージュの凱旋(海堂尊)

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チーム・バチスタの栄光』は面白かったのに、『ナイチンゲールの沈黙』、『螺鈿迷宮』と冴えない作品が続いてしまい、もうこの作者は見放しちゃおうかとも思ったくらいでしたが、この本は、かろうじて踏みとどまったかな。

テーマを「救急医療と病院経営の相反」に絞って焦点をはっきりさせ、新たな人物の登場を限定してストーリー的にもスッキリさせました。でも、これでやっと『バチスタ』水準に戻っただけですから、これ以上期待できる作家かどうかは、この後の作品にかかっているのでしょう。

「ジェネラルルージュ(血まみれ将軍)」の異名をとる救命救急センター部長の速水が特定業者と癒着しているという内部告発文書をめぐって、田口&白鳥の迷コンビが事実の調査と事態の収拾に乗り出します。でも田口の、ついているんだかいないんだかわからない、「ダイハード」のマクレーンと「ピンクパンサー」のクルーゾーを足した感じの状態は、いつもどおり。^^

ナイチンゲール』で、伝説の歌姫が入院したのと同時に進行しているという設定は、どこまで意味があるのかわからないけど、ちょっとした「遊び心」かな。「氷姫」こと姫宮は、「螺鈿迷宮」の潜入捜査直前で看護の実習中。本書ではドミノ倒しクラスのドジぶりだけじゃなく、ちゃんと活躍もしてくれますよ。

でも、この作者は決して「ミステリー向き」ではありませんね。無理してミステリー仕立てにしないで、エンタメ系のストーリーテラーとして開き直ったほうがいいように思えます。

2007/6