りぼんの読書ノート

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蒲公英草紙~常野物語(恩田陸)

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不思議な力をもちながらひっそりと暮らす「常野」の人々。前作『光の帝国』は、「常野」の色々な人たちを断片的に紹介し、「いよいよ大きな出来事が起こるのでは?」と思わせた所で中断。

シリーズ2作目の本書もまだ、本編開始前の「長い序章」かな。20世紀初頭の東北の農村を舞台に、旧家のお嬢様の話し相手を務めた少女・峰子が経験した「常野」との出会いが語られます。

「人を記憶にしまう」能力を持った春田一族が登場しますが、このストーリーの中心は旧家の「聡子お嬢様」です。「未来を予知する」遠目の能力者を遠い先祖に持つ聡子にも予知能力が発現していましたが、生まれつき病弱な彼女の命は今にも燃え尽きようとしていました。

アーヴィングの『オーウェンのために祈りを』と似ちゃってるかな。生まれつき、自分の運命と使命を理解していた少年の物語。特にラスト、明らかになる使命のところが。

でも「切なさと懐かしさ」を感じさせてくれる語り口は恩田さん特有のもので、読後感はかなり違います。年老いて少女時代を懐かしむ峰子にも救いが欲しいのですが、彼女にもまた、出番がめぐって来るのでしょうか。

お屋敷のネコたちがいい味出してます。何をするわけでもないけど、うずくまった姿が似ているところからつけられた名前が微笑ましい。将来、薄茶のネコを飼ったらキナコ、銀黒白のネコを飼ったらシジミと名づけてみたいと思ってしまったのでした。^^

2005/10