りぼんの読書ノート

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戦国自衛隊1549(福井晴敏)

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半村良さんの名作『戦国自衛隊』を、福井さんがリライトした作品です。

平成の世の中にブラックホールが出現。どうやら、5年前の事故で戦国時代にタイムスリップした自衛隊が歴史を変えてしまって、今の「現代」は消滅しつつあるようです。彼らを救出するために、新しい部隊が戦国の世に送り込まれます。チャンスは1回限り。しかし「救出部隊」の任務の中には、場合によっては前の部隊を殲滅することも含まれていました。

福井さんの本は『終戦のローレライ』に続いて2冊目ですが、この人、今の日本のありかたに相当不満を持っているみたいだな。

前の部隊の指揮官・的場は、歴史を修復することを拒否するのです。歴史を修復したとしても、その後に続くのは江戸幕府による鎖国産業革命から取り残されている間に、欧米によるアジア支配が進行し、やがては太平洋戦争と昭和・平成を通じての対米従属が待っている。だから、未来を作り変えねばならないと。まるで『ローレライ』の狂信的エリート大佐と同じような主張ですね。ツールとして「核」を使おうとしている所まで一緒。

5年の間に織田信長に成りすまし、やがて来る部隊を待ち構えていた的場に対し、「救出部隊」は歴史を修復することができるのでしょうか。

半村良さんの、荒唐無稽なオリジナルにはかないませんね。自衛隊問題を「思想的に」語っても、カタルシスは得られないのですから。

2005/10