りぼんの読書ノート

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眠り猫(花村萬月)

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花村萬月といえば、セックスと暴力の作家。西原理恵子なんかは「読むだけでトラウマになる」と言ってました。私も『ぢん・ぢん・ぢん』や『♂♀(おすめす)』を読んだ時は、その凄まじさに唖然として、しばらく気分が悪くなったほど。

人体を「モノ」として扱って破壊する暴力と、女性を「モノ」として扱ってイカせるエロスには、通じるものがあるのでしょうか。いや、あえてこういう世界を描くことによって、「感情」や「意志」の重要さを際立たせているんだと思いますが・・。

でも初期の作品では、それほどどぎつくもないようです。元刑事の「眠り猫」から「人生の裏を見られるかもしれない」との殺し文句で、舞台女優の道を捨てて私立探偵の助手になった冴子がヒロイン。折りしも、猫の相棒で元ヤクザの長田が依頼された、地方暴力団のボスの妻の浮気を内偵するという仕事は、猫や冴子を激しい抗争に巻き込んでいくことになります。しまうものでした。

この本でも、本来は凄まじい内容を含んでいるのに、マイナー女優の視点から語られることによって、オブラートにくるまれたようになっています。本来の萬月ファンには、ものたりないのかもしれませんね。でも私には、この程度で十分です。

2005/10