りぼんの読書ノート

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神の足跡(グレッグ・アイルズ)

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原爆を生み出した「マンハッタン計画」を超える規模で進められている「三位一体(トリニティ)」と呼ばれるスーパーコンピューターの開発。そのプロジェクトの目的は、人間の頭脳の活動を分子レベルでコピーして人知を超えるAIを作り出そうというもの。計画に疑問を呈して開発を中断させていた天才物理学者は殺害され、倫理学者として加わっていた主人公も厳しく監視されてしまいます。

いかにもありがちな「国家級の陰謀サスペンス」のようですが、後半になってトリニティが完成すると、物語の様相は一変。そもそも、誰の頭脳をコピーするのかが問題になるのです。全ての情報を取り込むことができて、事実上「死」を超越した存在は、限りなく神に近い存在になることが想定されるのですが、どのような人物の頭脳がそのベースとしてふさわしいのでしょう。

「三位一体」という名前自体にヒントが隠されているのですが、まさか、こういう答えだったとは・・。トリニティ自身にこの答えを選ばせるように説得するために主人公が全能の存在に挑む論戦は、半ば禅問答のよう。しかし、スーパーMRIの副作用が主人公に与えた影響には、ちょっとしたオチもありますので、お楽しみに。

この種の本の「つかみ」は、「ありそうだけど意表をつく陰謀」の設定にかかっているのですが、まずは成功しているほうでしょうか。

2007/6