りぼんの読書ノート

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中庭の出来事(恩田陸)

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何重もの入れ子構造からなり、「何が虚構で何が現実か」の境界を「演技と謎」を利用して、ほとんど極限まで曖昧にしていく物語。もちろん、一番利用されているのは「小説」のフィクション性です。

感想を書くためには、ストーリーに触れなければなりません。以下の感想は、相当部分、ネタバレを含んでいると思われますので、これからこの本を読もうと思っている人はパスしてください。

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「脚本家が不可解な死を遂げ、3人の女優が容疑者」という内容の舞台を製作した脚本家が、中庭で開かれたパーティの席で不可解な死を遂げてしまい、主演女優候補だった3人の女優に容疑が掛かる。

中庭のカフェ・レストランを訪れた女は、待っていた女に対し、自殺と断定された脚本家の死の真相に気付いたことを告げると、待っていた女は、突如として口元から血を流して崩れ落ちる。

霧深い山奥の劇場にたどりついた2人の男の前に3人の女優が現れ、物語の真相を巡るバリエーションを次々と演じてみせる。

作品『中庭の出来事』を製作した脚本家・細淵は、中庭で待ち合わせた同級生の女性・巴に対して、作品の構想について語り始める・・。

あるブログで、「就職活動中の女性が中庭で死ぬシーン」の意味が問いかけられていましたが、私の理解を書いておきます。

脚本家・細渕がこの物語を書いたきっかけとして語る「謎の死」は、一見「小説中の現実」のようですが、それも含めて「劇」ですから、「小説中の劇中のフィクション」だと思います・・たぶん。

結局は、すべて「フィクション」なんですけれどね。^^
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年齢・経歴の異なる3人の女優はそれぞれに魅力的です。学生演劇出身の性格俳優「圭子」と、新劇出身の大女優「芳子」に、芸能界の若きサラブレッド「亜希子」を配した布陣は『チョコレートコスモス』を思い出させてくれましたが、小説の狙いは全然違う所にありました。

2007/6