りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

螺鈿迷宮(海堂尊)

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前作『ナイチンゲールの沈黙』でほのめかされていた、桜宮病院の問題にメスが入ります。桜宮病院は、老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化させた複合型病院であり、終末医療の最先端施設として注目されていたのですが、その実態が明らかにされていきます。同時に国の意図も・・。

「火喰い鳥」白鳥は3作連続での登場となりますが、今回の役どころは、国の意図を代弁して執行するだけのもので、今までのような縦横無尽の活躍というわけにはいきません。白鳥の部下である「氷姫」姫宮もついに初登場しますが、彼女のキャラはちょっと予想外。何事も完璧にこなす「クール・ビューティ」イメージを想定していたのですが、まさかこんな・・。東城大学の「愚痴外来」田口は、今回は出番なし。代わりに、医学部留年生の「ラッキーペガサス」天馬大吉が聞き込み役。

とにかく、桜宮病院では人が死にすぎるのです。終末医療の現場ですから、ある意味では仕方ないのですが、その背後にあるものは、終末医療を切り捨てようとする国家的政策への反抗なのか、戦地を生き延びた老医師の執念なのか、経営者一族の暗い過去なのか、それとも単なる犯罪なのか・・。

登場人物のキャラ的にはともかく、内容的には前作よりも優れています。ただ、色んなことを盛り込みすぎて焦点がボケちゃったかな。一応シリーズになっているようなので、次作も読むつもりですが、あまり拙速で書き続けないほうがいいのでは?

2007/6