りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ブロークンエンジェル(リチャード・モーガン)

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オルタード・カーボン』の続編です。

27世紀。人間の心はデジタル化されてメモリースタックとなり、異なる肉体への移し変えが可能になっています。肉体的な死はもはや「死」を意味せず、バックアップのないメモリーを破壊された人間のみが、「真の死」を迎えるという、とんでもない世界になっています。

元特命外交部隊員のタケシ・コヴァッチが再登場。前作では「陰謀に巻き込まれる探偵」の役どころで、ハードボイルドの香りがプンプン漂っていましたが、本書は、火星人の古代遺跡を巡るアドベンチャー小説といったところでしょうか。

ある惑星で、政府軍傭兵部隊の将校として、反政府軍との不毛で過酷な戦いを続けているコヴァッチは、人類を凌駕する未知のテクノロジーを満載した、火星人の古代遺跡である恒星間宇宙船の情報を入手。戦争の行方すら左右しえる儲け話に乗ったコヴァッチは、軍を離脱。「遺跡」の発見者である女性考古学者とともに、「企業」と手を組み、発掘チームを組織するのですが・・・。

『ブロークンエンジェル』というタイトルは、あまりにもベタですが、翼を持っていたという火星人の姿から来ています。高度な宇宙文明を築き上げながらどこかに消え去った火星人について人類が巡らしていた想像の姿は、発掘を通じて崩れ落ちるのです。

ギブソンが開いた「サイバーSF」の世界を、ほとんど極限まで進めてしまったような、「ヴァーチャルワールド」ですが、2作目ともなるとガジェットの新規さも色褪せてきます。その分、登場人物の魅力や、ストーリー展開の面白さが必要になってくるわけですが、まずまず成功しているのではないでしょうか。

2007/5