りぼんの読書ノート

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世界の歴史8「帝国の時代」(J.M.ロバーツ)

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いよいよ、現在の世界と直接に繋がっている時代の記述に入りました。西欧文明の最盛期を描いた本書は、欧州諸国の植民地政策が進展した過程と、古い歴史を有するアジアの国々(インド、中国、日本)の対応と苦難、さらには、第一次世界大戦ロシア革命の勃発によって、その覇権が大きく揺らぐところまでを対象としています。

フランス革命を契機として、国民国家としての纏まりを見せるようになった西欧諸国は、19世紀以降、急速に世界に覇権を拡大していき、地球上のほとんど全ての地域を、直接的・間接的に支配するようになっていきます。西欧諸国がたどりついた「個人の自由と、それを可能にする国家」の理念が、他国の個人の自由を簒奪していくわけですが、当事者たちはその事実には驚くほど無自覚だったようです。排他的一神教であるキリスト教と、「進歩と発展」に無条件の信頼を置き、西洋的な倫理観・価値観を、独善的に押し付けていくことが、被征服者にとっても「善」であると信じていたのでしょう。

非西洋諸国の間でも、対応は分かれました。その国の伝統的価値観と西洋的な価値観のどちらを重視すべきかについて本来的な優劣はないはずなのですが、植民地化を免れたただひとつの国が、国ぐるみで西洋化を進めた(またその素地があった)日本だったことは、紛れもない事実。でもその話は、今では微妙な話題なのかも。

西洋諸国のみならず、ロシアもまた、カスピ海沿岸、中央アジア、シベリア、さらには中国との国境地域を掠めて、世界最大の植民地国となっていきます。アメリカもモンロー主義を逸脱して、カリブ海諸国やフィリッピンを領有化。結局の所、列強が富を得たのは通商からであって、植民地経営はほとんどが赤字だったと言われますが、まさに19世紀は帝国主義の時代だったのです。

そして最初の世界大戦が起こります。衰退一方のオスマントルコから独立した、スラブ系のバルカン諸国に対するオーストリアとロシアの主権争いが、ヨーロッパ諸国に、さらには全世界に拡大されてしまいました。予想を超えた近代戦争の激しさが、ロシア、ドイツ、オーストリアの帝政を滅ぼすに至り、イギリスもフランスも国力を低下させる中で、アメリカが唯一の勝者となって立ち現れてくるのです。

2007/5