りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ひとり日和(青山七恵)

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今年の芥川賞受賞作ですが、やっぱり想像通りの小説でした。「若い女性が世間に出る時の心の動き」というのは、ひとつのジャンルとなった感がありますが、だいたい、おもしろくありません。それは、主人公に魅力がないからなのです。

母の中国転勤により、母の知り合いのお婆さんの家に居候をはじめた20歳の知寿ですが、その動機は単純に「東京で暮らしたい」というもの。勉強するわけでも、必死で働くわけでもない。コンパニオンとキオスクのバイトで、本当なら一人暮らしなど無理な程度の収入を得て日々をおくり、ボーイフレンドを本気で好きになるわけでもない。最後に「少しだけ成長を見せる」といっても、職場で自分に関心を向けてくれた妻子ある男性とのデイトに向かう場面でエンディング。「成長して不倫かよっ」って、突っ込みたくなってしまいます。

わけのわからない若い女性と同居する、吟子お婆さんの心理のほうが魅力的。どうせなら、そっちの視点で書いたほうが深みも出て、おもしろい作品になるような気もするけど、そこまでの芸はないのでしょう。文章や表現は上手な作者なのです。魅力的な女性になって、魅力的な作品を書いて欲しいと思うのですが・・。

2007/5