りぼんの読書ノート

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世界の歴史7「革命の時代」(J.M.ロバーツ)

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「革命の時代」と題した第7巻は、第6巻「近代ヨーロッパの成立」と対になって「近代国民国家の成立」をダイナミックに記述しています。アメリカ独立戦争の個々の戦いや、二転三転するフランス革命の主役たちの権力争いの詳細な記述があるわけではありません。むしろ、革命そのものについて熱く語られることはなく、ダントンもマーラーロベスピエールも、脚注程度にしか扱われていないのです。

では、何が重視されているのか。第一に、農業技術の進歩による収穫量の増加がもたらした人口増加であり、第二に、識字率の向上を裾野として広がった啓蒙思想の普及です。そして結果としてフランス革命の思想をヨーロッパ全体にもたらしたナポレオンが重視されるのです。これには、大陸を支配したナポレオン軍が普及させた新しい思想という面と、反ナポレオンの機運の中で醸成された被征服地の諸国民が「国民国家」という概念を自覚することになったことの両面が含まれているのですが・・。

フランスの動きを見てみましょう。1815年のウィーン体制のもとで王政復古が行われても、1830年の7月革命は立憲君主制をもたらしても、1848年の2月革命の後はナポレオン3世による帝政を敷いても、それらはむしろ例外。もはやフランスに王政が戻ることはありません。

ただ、誤解してはいけないようです。「革命の時代」がもたらしたものは決して「自由と民主主義」ではなく、最終的には「ナショナリズム」だったのですから。強国のナショナリズムは、弱い国のナショナリズムをおしつぶします。イタリアも、プロイセンも、この時代の後で国家統一を実現しますが、強国が自らが支配する地域の独立を許すことはありませんでした。(例外は、弱体化したオスマン・トルコから独立した、ルーマニアセルビアモンテネグロなど。)そして、時代は「帝国の時代」である19世紀を迎えることになります。

2007/4