りぼんの読書ノート

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泣き虫弱虫諸葛孔明2(酒見賢一)

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前巻で、劉備孔明三顧の礼で迎えてエンディングと思っていました。続きがあったんですね。でも、どこまで続くのでしょう。

だって、第2巻でも「長坂坡」までしかいかないんですよ。この後、赤壁があって、蜀漢建国があって、英雄たちの死があって、出師の表があって、五丈原まで、こんなペースでたどりつくのでしょうか。ともあれ、多くの人に愛されてきた『三国志』にツッコミ入れまくりのこの本は、めちゃくちゃ楽しい作品に仕上がっています。

そもそもどうして、荊州に攻め入った曹操から逃れる劉備軍と一緒に10万もの荊州の民衆が、流浪の民となって逃げ惑ったのでしょう。私だって疑問に思います。荊州に無血入城を果たした曹操は、人心の安定を第一に図るはず。せいぜい上級官吏のすげ替えや一時的重税を課すくらいなのに、劉備軍と一緒に逃げ出した民衆は、戦乱に巻き込まれた結果、大半が無残な死を迎えることになってしまったのですから。

実はこれは、孔明の大策謀によるものだったらしい(?)。すなわち「曹操の大軍に立ち塞がった」かのように人の耳に聞こえ、惨敗して逃げているにもかかわらず「華々しく勝った感じ」を漂わせ、民衆の人望も失わず、「希望の新天地に思いを馳せる印象を残す」との策謀に、劉備の「魔性のカリスマ性」が相乗効果を発揮したとは!

従って孔明の指示は明確です。「各自、伝説を作るように」。超雲は阿子を抱えて単独敵中突破、張飛は長坂橋での大立ち回り。関羽がいないのは、全員揃っていて「大勝利でないのはおかしい」との孔明びいきの「黒い勢力?」のしわざでしょうか・・。

呉の実情が、それぞれの一家がシマを持って「仁義なき戦い」を抗争中の「や○ざ集団」という例えも、わかりやすくていいですね。広島弁に慣れないと、読みにくいのですが・・(笑)。

あちこちで鋭いノリツッコミを入れまくり、斬新な例えで笑いをとりながら、ポイントはきっちり押さえているのが、酒見さんのいい所。孔明の第一の功績は、「チンピラ居候集団」に過ぎなかった劉備軍を指揮命令系統の整った近代的軍団に作り変えたことではないかだって。そういえば、今までそんな指摘をした人はいなかったのでは?

個人的には、エロトークの名手である簡擁に預けられてしまって男修行にはげむ、まだ20歳でウブな諸葛均孔明の弟)の将来がとっても心配です・・。

2007/3