血の繋がりのない親子関係を描いた、2つの物語。
家業をつぶして妻からは離縁され、親友の父子家庭に居候しながら家事と子育てに奮闘している元シェフ、渡辺毅は悩みます。同居している親友とホモ関係と見られているのではないか。ほとんど稼ぎがない主夫生活は男の沽券にかかわるのでは・・。
初婚にも再婚にも失敗し、自分が愛情もって育てた前夫の連れ娘と引き離されてしまったキャリアウーマン、児島律子も悩みます。自分の愛情が足りなかったから、娘はグレてしまったのではないか。無責任な実の父親から、娘を守ってあげるべきだったのでは・・。
でも、ご安心ください。自分の存在について悩み続けた鷺沢萠は、やっぱり優しいのです。自分が必要とされている所。自分が大切に思う人がいる所。お帰りって声をかけてくれる人がいる所。血の繋がりはなくても、そういう所が「家庭」であって、誠実に生きている人ならば手にすることができるはず。たとえそれを得ることが「奇跡」と呼ばれようとも・・。
この人の小説は、もう読めないんですね。
2007/3