りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ぼくのメジャースプーン(辻村深月)

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MIYUKIさんがお奨めしていた本です。不思議な力を持つ少年が、ある事件の犯人に「罰」を与える物語。ある事件とは、小学校で飼っていたうさぎの大量虐殺。うさぎたちの無残な死体を目撃した幼なじみのふみちゃんは、ショックを受けて感情を封じ込め、登校拒否になってしまいました。面白半分にこんなことした犯人はわかっているけれど、「器物破損」で執行猶予付きの罰なんて軽すぎる。

少年の持つ不思議な力とは、他人に「条件付き命令」を与える力。「○○しなさい。しなければ△△できなくなる」という命令をひとりに対して一度だけ、与えることができるのです。こんな力を持ってしまうと、使い方が、めちゃくちゃ難しい。「△△」の部分が、相手にとって何の意味も持っていなかったり、「○○」の部分が簡単なことの場合には命令の意味がなくなるし、「○○」の部分が実行不可能なことであれば無条件命令にもなる。

たとえば「ビルから飛び降りなければ心臓麻痺を起こす」では、命令した者は死刑執行人となってしまうわけですから、自ら「裁きの神」となる覚悟がなければ、こんなこと言えません。要は「○○」と「△△」のバランスを取る必要があるということ。主人公の少年も悩みます。犯人が心からの反省をしていても、重い罰を与えるべきなのか。少年はどんな結論に達したのでしょうか・・。

少年の「心の揺れ」が良く書けていて、いい作品だと思うけど、やっぱり「この力」は反則ですよね。まじめな少年だから悩むけど、全然悩まない人もいるだろうし、量刑を相手の心理に委ねるというのは「罰」を与える者としては「責任逃れ」とも思えます。そもそも「条件付き」の呪いなんて、ギリシャ神話の昔から、関わる人を全員不幸にするって決まってるのですから。

2007/3