りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ヒッキーヒッキーシェイク(津原泰水)

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タイトルにある「ヒッキー」とは「引きこもり」のこと。ヒキコモリ支援センター代表を名乗る、いかにも胡散臭い竺原丈吉こと「JJ」が、ヒキコモリの天才たちを集めて壮大なプロジェクトを開始するのです。

JJを介して集められたメンバーは、天才的美少女画家「パセリ」、コンピュータおたく「セージ」、伝説のハッカーこと「ローズマリー」、そして音楽の才能を有する「タイム」。もちろん「サイモン&ガーファンクル」の「スカボローフェア」が意識されています。

JJの目的は、極限まで人間に似せたAIに対して感じてしまうという「不気味さ」を超えたAIを制作しようというものでした。しかし本書は「プロジェクトX」ではありません。JJは第2、第3のプロジェクトを抱えているし、参加者たちもそれぞれの思惑がありそうなのです。そしてローズマリーをも翻弄する「ジェリーフィッシュ」なる超絶ハッカーの謎が登場して、物語は収拾がつかなくなっていくのです。

正直言って、多くを詰め込みすぎで破綻しているような作品なのですが、この種の破天荒さはいいですね。読書の楽しみは、こういうハラハラドキドキにもあるのです。たとえラストが美しい調和とならなかったとしても。

2019/5